日本人の脳

 日本語って視覚言語だけじゃなくて聴覚言語も独特なのね*1
 少なくとも角田法を用いて虫の声などが優位脳*2で識別されているかが判別できれば、フォークト=カンプフ法*3を用いるより確実に日本人的なメンタリティを持ち得るかが判断できるってあたりが素晴らしい。

角田法

 実験の詳細は省略しますが、大ざっぱに言うと純音とア音が音楽脳*4と言語脳のどちらで主に認識されるかを調べるテストで、このテストが開発された30年前ならともかく、今ならノートパソコンとヘッドホンを使って簡単にテスト出来そうなのが素晴らしい。
 現在ではCTスキャンMRI等を使うのが脳科学では一般的に見えるけれど、角田法はかなりお手軽にテスト出来るので、もっと利用されてもいいんじゃないかと思った。
 ソフトウェア的には簡単なので、ウェブでテスト用のツールが公開されてないか探してみたけど、残念ながら見つからず。

オタクの脳の使い方

 角田法による実験によれば、日本人は音の微細な変化を優位脳で感じ取るし*5、外部の刺激によって容易に優位脳で識別するように変化する*6、らしい。
 角田氏の実験では主に聴覚のテスト*7ですが、視覚による刺激を与えることにより何に対して優位脳が反応するかのテストがあれば興味深い結果が出る可能性があるんじゃないかと思ったり。
 例えば、

・風景写真
・人物写真
・絵画(風景)
・絵画(人物)
・漫画(コマ割を含めた1ページ。ただし、吹出しの中は空)
・漫画(キャラクターのみ)
・文字(日本語)
・文字(アルファベット)

等に対して、日本人と日本人以外では反応が違う可能性があるんじゃないかとか、あるいは日本人でもオタクとそれ以外では反応が違うんじゃないかと思うんですよ。
 ちなみに僕は「オタクは漫画等のキャラクターを見て優位脳が働き、それ以外は劣位脳が働く」のではないかと思っています。
 脳科学系の大学生が卒論とかでやってないでしょうかね。「オタクの脳の使い方」という視点を除いても、日本人とそれ以外では結果が違いそうで、面白そうな実験なのですけれど*8

脳科学と言語

 割と大きめの書店で脳科学関連の書籍をざっと眺めたのですが、言語と脳についての書籍ってほとんどないんですね。非常に興味深いテーマだと思うんだけど。
 そのかわり「心と脳」についての書籍は結構たくさんあって、生物学の所にあったり心理学の所にあったりするんですけどね。「心と脳」なんていうどうでもいいことを研究するより、「言語と脳」についての研究が進んで欲しいと思います。

日本人と優位脳

 そういえば「心と脳」以外にも「右脳(劣位脳)」関係の書籍がたくさん出てる気がする。
 これは日本人(あるいは日本語を母語とする人間)が異常なまでに優位脳を酷使することと関係あるんだろうなぁ。
 ちなみに、「劣位脳を鍛えれば天才or芸術的才能に優れる」なんていう科学的根拠は皆無らしいですよ。

養老孟司

 「唯脳論」など、養老孟司氏の書籍で「日本人の脳」および角田氏の論文についての言及がないのが気になります。世代的にも知らないかったとは思えないし*9
 まあでも、仮にお互いに全く影響がなかったとすれば、それぞれから日本(および日本語)の特殊性が導かれているのは興味深いと思います。

アーヴ語*10

 残念ながらアーヴ語は母音文化ではなさそうだし、視覚言語に特異な特徴を持っていなさそうなので、大和言葉をベースにしているとはいえ日本文化には遠そうなのがちょっと残念。

関連書籍

日本人の脳―脳の働きと東西の文化

日本人の脳―脳の働きと東西の文化

 この書籍からすでに25年以上経過しているわけで、その後の日本語と脳の使い方の分析が気になります。
 いちおう続編が出てるのだけれど、版元で品切れしてるっぽいのがイタイ。
(どーでもいいけど、活版で37版とかになってるといい加減印刷が汚くなっててちょっとナニ。その点ではオフセットor樹脂活版で毎回版を作り直してるほうがいいなぁ。)

関連記事

日本人の脳と日本語

*1:似てるのはとりあえずポリネシア語くらいらしい。

*2:言語脳。一般に左脳。

*3:google:フォークト=カンプフ法。P.K.ディックなんて読んでないですかそうですか。

*4:あるいは劣位脳。一般に右脳。

*5:例えば日本人(および、日本語およびポリネシア語を幼少期に学習した者)は虫の鳴き声などを優位脳で認識するが、それ以外の人々は劣位脳で認識するとのこと。

*6:例えば日本人の場合は純音に対してア音による妨害をすれば優位脳で認識するようになる。他にも優位脳で認識する類いのストレスを加えると、通常は劣位脳で認識するものが容易に優位脳で認識するようになる。

*7:のちに、臭覚による刺激による劣位脳から優位脳での認識の変化のテストもある。

*8:既に誰かがやっているようでしたら、教えてください。是非に。

*9:もちろん、養老氏の主張は解剖学的見地によるものであり、「構造と機能」という見方や、あるいは「言語は視覚と聴覚の融合から生じたのではないか」という主張に関しては、主に聴覚のみを調査した角田氏の研究とは関係がないために触れなかった可能性はあるけれど。でもねぇ。

*10:分からない人は「星界の紋章」を読んでくださいな。