じゃあ、どんな作品なら買うんだろう?(面白い作品と好きな作品の違い)

 ちょっと前に面白さについて考えてた時に「でも面白くてもその作品を買うとは限らないよね?」とか思って、「作品を買うのはやっぱりその作品の何かが好きになったからだよな」的なことを書こうとしたら4年前に同じ結論に達していたのに気づいてガッカリした今日この頃。
 まあでも「面白い作品」と「好きな作品」の違いの考察はあとで役立つかもしれないのでメモしておく:

「面白い作品」が売れないのは普通のこと。

 「面白い作品」というのは前に考察したように基本的には「次」や「続き」を見たい作品なんだと思う。
 だから「面白い作品」であればアニメの放映や雑誌の連載を追いかけるわけだけど、あくまで見たいのは「次」「続き」なのだから、既に見た/読んだあとでさらにパッケージメディアや単行本を買う必要はないわけだ。
 したがって「面白いのに売れない」というのは当たり前であって、不思議に思う必要はない。


 一方で「面白くて売れる」ものもあるわけだけれど、それは

  • 初出が単行本(あるいはパッケージメディア)の場合*1
  • 雑誌や放映で読んでいない/見ていない*2

――のどちらかだと思われる。


 小説の場合は基本的に初出が単行本だから、「面白い」ライトノベルはちゃんと売れる。
 ただし、上記で書いたように一度読んだものは不要なので、すぐに古書店に売られる可能性も高い。


 漫画の場合は雑誌を定期購読するより単行本のみを購入したほうが安価になる可能性があるから(雑誌に「面白い」と思う作品が少なければそうなる)、単行本でのみ作品を追いかける可能性はそれなりに高い。
 また、小説と同様に古書店に売却される可能性も高い。


 アニメの場合はパッケージメディアの単価が高いので、「面白い作品」はパッケージの購入ではなくレンタル(やネットの配信)などでの支払い(購入)になると思われる。
 したがってアニメの場合は「面白くて売れる」作品はほぼ存在しない(レンタルやネット配信をしていない作品であれば売れる可能性がある)。

作品を「好き」になってもらうには、

 作品を「好き」になる理由は様々あると思うのだけれど、当然ながら絶対に「好き」にする方法なんてのはない。
 ただ「好き」になってもらえる可能性を高める方法はいくつかあって、そのうちの1つは「作品に継続して触れてもらう」ことだ。つまり、「面白い作品」は継続して触れて(読んで/見て)もらえるから、結果として「好き」になる人が多くなるんだと思う。
 若木民喜先生は「再編集して1/4〜半分くらいにすれば面白くなるのに」って言われててその意見には賛同するのだけれど、ただもし本当に短い尺で作ってしまうと視聴期間が短くなってしまい、結果的に「好き」になってくれる人が減る=売れ行きが悪くなるんじゃないのかな、っていう気はするのです。
(ただし後述するように再編集して「総集編」を販売するのは効果的だとは思う)


 もちろん一目惚れ的にキャラクターや世界設定が「好き」になることもあって、そういう時に「そんなに面白いとは思えないけど、好き」な作品になるのだろう。
 また、一目惚れを誘発しやすい要素の1つが「萌え」だったり、あるいは一昔前の「SF設定」だったんじゃないかという気がする。

「好き」に支払える価格の上限。

 当然ながら「好き」にもレベルがあって、どれくらい「好き」かでその作品に支払うことができるお金も変わってくるでしょう。


 単行本に関しては単価が低いので(基本的には500円前後、千円未満)、ちょっと「好き」でも購入しやすい。
 グッズや既刊の一気買いになると価格が1桁上がるけど(2千円〜5千円程度、1万円未満)、それでも購入はしやすい。原作付きゲームなんかもこの辺だ。
 これがアニメのパッケージになるとさらに1桁上がってしまうので(3〜5万円くらい?)これは相当「好き」になっている必要がある(アニメのパッケージが全巻購入を前提としているのは、単巻で満足できるような構成で販売していないため)。


 原作付きのアニメは既に作品が相当「好き」な人に向けて作られているので、それで売れ行きが見込めるわけです。
 だからプロデューサーの発言が正しくて、板垣監督の考えはやっぱり間違ってるんですよ。だって上でも書いたように、仮に面白く作っても*3それは売れ行きにはほとんど影響しないんだから。


アニメ作品の総集編の価値とは、

 ことある毎に総集編を作って売ったほうがいいんじゃね?とか書いてるのは、若木先生が言われるように再編集したほうが視聴しやすくて面白いものになるからだし、しかもそこそこ「好き」な人も買いやすい価格設定にできるから結構売れると思うからなんですよ。
 しかも今までのパッケージを買っているような相当「好き」な方々は通常パッケージを買い続けるでしょうし、ひょっとしたら総集編も買ってもらえるかもしれないので、売上が嵩上げされるされるためメリットは大きい。


 ただし、総集編をタイムリーにリリースしないと「好き」な人が存在を知らなかったり、あるいは時間が経過して「好き」でなくなってしまうとよろしくないので、できれば通常パッケージを出すタイミングで総集編のリリースを告知すべきと思っています。
 再編集にかかるコストが大きいのだとしたら、パッケージメーカーに旨みはないから出していないのかもしれませんけれどね。単に「前例がないから」やってないんだとしたら、やってみればいいのにとつくづく思います。
(とりあえず安価なUMD版を出してるバンダイビジュアルと、いろいろ大変なことになっているGONZOあたりに期待したいところ)

*1:小説はほとんど単行本が初出になる。アニメの場合はOVAの場合

*2:テレビの場合は放映していないために見れない可能性もある。

*3:バスカッシュ!』を見た限りでは板垣監督が本当に面白い作品を作れるのかちょっと疑問に思っていますけどね。少なくとも「好かれる」作品は作れない=売れる作品は作れないんじゃないかなあ。