ようやく『バニラ』(アサウラ、スーパーダッシュ文庫)を入手して読んだ。
『ベン・トー』シリーズが大変面白くてアサウラさんの既刊を読もうと思ってずっと探していたのですが、ようやく『バニラ』を見つけて購入。できればデビュー作『黄色い花の紅』から読みたかったけど、まあ仕方ない。
で、読んだ感想を書く前に一言――『喰霊―零―』が面白かった人は是非とも読むべきだ。
絶望的な状況から始まって、その後も全編に漂う絶望感は読んでいて辛い気分になるけれど、でもそれゆえに最後まで一気に読むことに(途中でやめると夢見が悪くなりそうだったので)。
ケイとナオのセカイへの絶望には共感しつつも、でもそれじゃダメなんだよと中谷のように(心の中で)叫びつつ、でも自分たちは彼女らを救うことはできないんだという元川の絶望を感じながら――どうしても『俺たちに明日はない』を思い起こさせますし――ようやく決着したときには心の底から安堵しました。
孤独による絶望とか、それを知っても何もできない無力感とか、そのあたりに共感できるかできないかによって評価が分かれそうな気がする作品です。
僕にとってはどちらも刺さるテーマなので、もう胸を掻きむしりながら読みましたよ。刺さりすぎてしばらくは読み返したくないですが(苦笑)、でもあとできちんと読み返さなくちゃと思うくらいに面白かったです。
どうやら一応「百合もの」として紹介されているようですが、そういう作品として読むと物足りないでしょうし、ひょっとしたら「面白くない」と思うんじゃないのかな、とちょっと心配しています。
あとは若い人がどんな感想を持つのか気になるところですが――ケイとナオに共感できるのは(昔の自分を振り返ると)分かるけれど、元川や中谷の言い分を素直に受け止められるのかはちょっと分からない(自信がない)。まあでもアサウラさんもずいぶん若い人みたいですし、裏主人公たる刑事たちにも共感できるんだろうなあ。
そういやご本人のブログで
(´・ω・`)……しかしながら黄色い花の紅やバニラの次にベン・トー買ってくださった方はまだ苦笑いで許してくださる場合が多いかと思うのですが、果たしてベン・トー→バニラの場合……受け入れていただけるのかちょっと心配です。
アサウラの生存観察室 お久しぶりです。
――なんて書かれていましたが、僕は『バニラ』を読んで『ベン・トー』で気になっていた部分が氷解して「なるほど!」と思いましたよ*1。
『バニラ』の次に『ベン・トー』を読んだ人のほうが「えっ!?」と思ったんじゃないのかなぁ。
追記
感想をちょっとだけ追加しました。